それは不意打ちのように私を襲った。
去年の夏、ブラジルで経験したカルチャーショックは、正直まったく予想していなかった。ブラジルへの旅は3度目で、バックパッカーとしてさまざまな地域を巡ったこともある。日常会話に困らない程度のポルトガル語も話せる。長年続けているブラジルの格闘技カポエイラを通して、多くの個人的なつながりも築いてきた。だからこそ、自分はすでにブラジル文化をよく理解していると思っていたし、異文化コンサルタントとして、あらゆる状況に対応できる、とどこかで高を括っていた。
リオ・デ・ジャネイロで開かれるカポエイラのイベントに参加するために渡航し、市内中心部のセントロ地区に一週間滞在することにした。バーやお店が軒を連ね、市内どこへのアクセスも便利なセントロ地区。ブラジル人の友人たちが止めるのを聞かず、あえて自分にとって未知の地区を探索してみたいと思った。セントロのすぐ近くにはファヴェーラと呼ばれる貧困地区があり、多くのホームレスの人々が路上で暮らしていた。街の空気は張りつめており、ホテル周辺を歩いているだけでも、自分の行き先に常に細心の注意を払わなければならなかった。一本通りを間違えれば、危険な地区に入り込む可能性と隣り合わせだ。夜になると、バーからの大音量の音楽がホテルの部屋まで響き渡り、浅い眠りに悩まされた。
セントロに到着して数日後、私は体調を崩した。その後ドイツに帰国してからも、何週間もの間、疲労感が抜けず、気分の落ち込みや無気力さが続いた。いったい何が自分に起きているのだろう。——その答えがようやくわかったのは、去年11月のディープ・カルチャー・マスタークラスに参加したときだった。
慶應大学のジョセフ・シャウルズ教授による「ディープ・カルチャー・アプローチ」を学ぶ講座は、文化を脳科学の視点から捉えるものだ。私たちの脳は通常「オートパイロット」状態で機能しており、無意識のプロセスによって日常生活がスムーズに営まれている。しかし、異文化環境ではそのオートパイロットが絶えず中断され、脳の認知機能は、それまで経験したことのない未知のサインや行動様式、リスクを解釈するためにフル稼働を強いられる。
セントロでの滞在で起きたのは、私の脳が慣れ親しんだ思考パターンと、まったく異なる文化的現実との正面衝突のようなものだったらしい。この衝撃が持続的に加わったことで、私の脳内システムがパンクし、その結果が疲労や体調不良、抑うつ的な気分として現れたのだ。
異文化体験は、慣れ親しんだ心の地形をならしていくブルドーザーのような圧倒的な力を持つ。その結果起こるカルチャーショックは、決して弱さの証ではなく、ごく自然な反応である。そう認識できたことは、今後、異文化の課題に直面する人々を支援していく上で、大切な気づきとなった。てっきりつらい負の経験だと思い込んでいたカルチャーショックは、振り返ってみれば、かけがえのない経験へと変わったのだ。
ブラジル文化を、そして異文化理解を十分に知っていると思い込んでいた自分が、いかに無知だったか。今は思う。
Now I know that I don’t know.
文化と脳科学を含む「ディープ・カルチャー」をさらに深く探求していきたい。私の好奇心は強くかき立てられた。
ジョセフ・シャウルズ氏は、異文化分野の専門家を支援する非営利団体日本異文化研究所 Japan Intercultural Institute(JII)の代表を務めています。JIIのコース「ディープ・カルチャー・マスタークラス」と「ディープ・カルチャー」をテーマにしたポッドキャストはどちらも素晴らしい内容でおすすめです。


