なぜドイツの都市は「住みにくい」と感じられているのか?

先日バイエルン放送の取材を受けた。海外移住者の視点から、世界中の主要53都市を「住みやすさ」で比較した調査が発表された。物価や治安、住居の見つけやすさ、役所手続きのしやすさ、現地での歓迎度など、22項目にわたる詳細な評価だ。
この調査で、ドイツのベルリン(46位)、ミュンヘン(50位)、ハンブルク(52位)と、主要都市が軒並み下位に沈んだ。https://www.internations.org/expat-insider/2024/best-cities-for-expats-40486 

取材では、ミュンヘンに生活して20年以上経つ外国人としての意見を求められた。テレビではインタビューで話した内容がかなり割愛されて、ドイツの飾らない国民性、特にバイエルン地方の不愛想さに慣れるまでは疎外感を感じやすいのでは、という点のみ放映されていた。しかし、最大の要因は規則を最優先する国民性にあるのではないか、と思っている。

移住者は、先ず官僚的すぎる公共サービスの洗礼を受ける。住民登録ひとつとっても予約が取れず、必要書類が多い。滞在許可証に至っては企業がしっかりと滞在をサポートしているケースでも、発行まで7,8カ月から1年間以上待たされた、とよく聞く。デジタル化の遅れが顕著で未だにほぼ全てが紙ベース。外国人はこの間、仮滞在証明をもらえるが、それではドイツ国外に出国できない、とか出国はできても、再入国時に問題が生じるという噂もあり、手続きが終わるまで生活が始まらない宙ぶらりん状態がかなりの心理ストレスとなる。

ルールありき、という考え方は例えば公共交通の券売機にも反映される。ドイツの公共交通はどこも基本的に改札がないし駅員さんもいない。たまに電車の中で切符をみせるよう私服係員に言われ、その時に切符を出せないとアウト、罰金という仕組み。駅には交通マップと料金ゾーンが張り出してあり、乗車前に、行き先によって自分で値段を調べて券売機で切符を買うのだが、これが本当に難解だ。いつも行く市内ならまだしも、少し遠くの行き慣れていない場所へ電車で出掛ける際、このマップとにらめっこして値段を調べる。数年前からようやく携帯用アプリが導入され、買う切符を間違いにくくなったが、従来ユーザーからは「分かりにくい」と苦情が出ていた券売システムだ。

一度10分程頑張って自分で「多分この値段」と思って切符を買い乗車したら、乗車中係員に調べられ、正規の値段にほんの少し足りていなかった、と分かった。勿論差額を支払う用意があったが、係員は杓子定規な対応で罰金を全額要求。紋切型で柔軟性がなく、「例外を認めない」傾向は、ユーザー側には冷たく人間味がなく映る。

ドイツの日常は、「もっと分かりやすく教えてもらえたらこっちも間違えないのに」とつっこみたくなる、こんな例であふれている。これは、ドイツ語がまだ不自由な外国人移住者には相当厳しいし、不親切に受け取られても仕方がない。 一見すると無愛想に映るが、個人として話してみると悪気がなく、誠実な方もとても多いのがドイツ。規則優先の社会構造が外国人にとってストレスになりうるからこそ、あえて制度と人を切り離して捉える柔軟さが、移住者側に求められるのかも知れない。

関連記事